造本の旅人 annex

このページは、RANGAIに不定期連載中の「造本の旅人」の楽屋裏、制作ノート的なものです。
「造本の旅人」は、好きな作品を、自由な発想で好きなように「本」にする試みです。
「本」とは、紙の束を綴じたものとは限らない。また、「ぽっぺん堂」は普段、豆本と呼ばれるサイズの本を手がけていますが、ここでは本のサイズも大小さまざまになっていくと思います。
ここは雑記帳のように、制作の途中に思ったつれづれを綴っていくスペースです。

「あなたを起こす99の方法」イイダアリコ


今回はカバーに裏地を取り付ける方法に四苦八苦した。
なぜならカバーの素材は両面加工された不織布で、アイロンをかけると裏面が溶けてしまう。
そりゃそうでしょうね、プレゼントを入れてリボンをかけて使われるはずのものなのだから、まさかアイロンで接着芯をつけることなんて想定されていないでしょう。
しかし素材としてあきらめきれず、ありとあらゆる接着方法を試した結果、非熱接触でこわばらずくっつけられる接着剤にたどりついた。貼り合わせて24時間乾燥した後まつり縫いしたものがこちらになります。


イイダさんのミニコミ魂はほんとうにすごいのだ。以前、食事をご一緒した折など、おみやげとして「通信」をちょいちょいいただいた。B5やA4のカラーペーパーを半分折りにしたもので、内容は街で耳にしたちょっとおもしろい話や、家族のおもしろい言動、笑ってしまった誤植など。
それらをイラスト付きで(すべて手書きで!)レイアウトし、コピーしたものだ。もらって帰るのがいつも楽しみで仕方なかった。
なおコレクションは「起こし方」のみならず、雪の降った日に近所の雪達磨を撮影して集めた「だるコレ」などというのもあった。『別腹』7号では「虹食辞典」と銘打って古今東西から集めた「食」にまつわる話題を開陳した(辻征夫「雪わりのラム」、シュヴァンクマイエル「肉片の恋」など)。


イイダさんのそれは、世界からおもしろみを発見して貼り合わせる希有な能力だ。おもしろいことが起きるのを待つのでなく、周囲からおもしろそうなところを探し出す、集めて編集して共有する。
いつもびっくりさせられっぱなしなイイダさんを、いつか「あっ」と言わせたいと思っているのだけれど、その目標はまだ果たされていない。