「かめれおん日記」中島敦

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ちくま文庫の解説で池澤夏樹氏が中島敦の作品について、「南方志向」という言い方をしていたのがおもしろかった。
いわゆる中国を舞台とした「北方系」の作品は、北への忌避感から文体が硬く、「南方系」の作品とそういう意味で異なっている、という指摘だ。
たしかに、南洋を舞台とした作品は文体がイキイキしてる、と感じられるところもある。しかしそれだけに、パラオへ赴任した折に体調が悪化したことは、中島敦本人にとってショックだったのではないか、という想像もふくらむ。
あこがれの南の地で、敦はいろんな意味で解放されることを願っていたんじゃないかなあ、と思うのだ。

本体は本かがり上製本でスタンダードな作りになっている。
問題は外箱に「いかにして穴をあけるか」だった。

サークルカッターという商品がある。円形の押さえの上に円盤状のフタが載り、その円周上にカッターの刃が装着され、円を掌で押さえて下の紙をくりぬく、というもの。
外箱は芯となるボール紙が1ミリの厚さをもち、それに表裏別々の紙をはるので、正味1.2ミリほどの厚みになる。
これが、切れない。さらに言えば、通常箱は内張→芯ボールの組立→外張という工程を踏む。箱が完成してから切り抜くには、内側になにかつめものをして加重によって箱がつぶれないようにしなければならない。
そんなん、無理である。

結果、「穴を開ける面のみ表紙に貼り付け乾燥させ、穴をあけてから箱の残りを組み立て、外張り」という工程になった。
穴を開ける道具はサークルカッターからOLFAのコンパスカッターに変更した。
刃の厚みが違う。細かいサイズ調整はできなそうだが1ミリ厚の紙くらいスーで切り抜ける。ゴイス。
なんとか無事切り抜き、穴の断面は山崎曜さんの「もっと自由に! 手で作る本と箱」を参考に、リキテックスの黒で塗った。
試作から数えていくつ作ったのか…。もう、ヘトヘトである。

ところで今回の本は、某氏のお取りはからいにより我が家にやってきた手回しプレス機で制作した。
バッケ板で本を挟み、板ごと本機に挟んで上のハンドルで圧着、固定する。

↑こんな感じで一晩置く。表紙と本体の接着が実に綺麗にできた。感謝感謝です。